中納言良房 外伝 あこな(下) 翌日、戦場から本府へと帰る軍勢が都万目の村を通りかかった。 タカムラを先頭とする軍勢は、縄で縛られた捕虜を本府へ運びつつ、亡くなった者の故郷に遺体を帰しながら帰還していた。 ここで都万目の村に寄ったのも、その一人が都万目の村の出だから。 「たいへん申し訳ないことをしてしまいました!」 タカムラは何よりも先にトシメの元に駆け寄り、頭を下げた。 今回の軍勢を指揮したのはタカムラである。だから、遺族の怒りが集まるとすれば指揮官であるタカムラであろう。 だが、タカムラが後ろの安全なところで悠然としていたのではないことは誰の目にもすぐにわかった。 背の高いタカムラだからか顔の傷は右の頬だけだが、首から下はいたるところに傷痕があり、包帯からは...2010.07.18 15:10平安時代叢書
中納言良房 外伝 あこな(上) 島根県の七類や鳥取県の境港から高速船で一時間、あるいはフェリーで二時間半の旅路を経ると隠岐に着く。今でこそ気軽な旅路になったが、かつては一日がかりの旅路であった。2010.06.30 15:05平安時代叢書